« 代々木アニメーション学院、倒産 | Home | 今夜放送「ワーキングプアⅡ 努力すれば抜け出せますか」 »

代々木アニメーション学院に見る「専門学校」出て仕事できるのかどうか

2006/12/9 土曜日 3:22:01 | エッセイ — By ebifly

たまにはまともなのを書けと実況で半年前に言われたので今頃書いてみる。いい機会なので。

まずビジネスの話。アニメとゲームの専門学校卒は雇えません、ということはない。出身は全然関係ないというのが正直な話。実際の作品を見ればわかるので、「お、こいつはできるな」と思えば仕事を依頼するし、できないと思われる程度のレベルの作品しか持っていないのであれば、そりゃ仕事は与えられない。専門学校卒の場合は大体卒業作品を見ることになるわけですねん。ゲームの場合は複数人で作っている場合が多いので、どのパートを担当したのか話を聞くことになるわけです。その際に自分単独の作品を見せてくれるならグッド。絵の場合は一番自信のある絵から順に10枚ほど、さらに10枚ほど線画とかラフスケッチを見ればある程度わかります。その場でスケッチして作業の様子を見れば一目瞭然。極端に言えば、描く速度が速くて全体の構図と人体構成が破綻してなければ塗りが多少下手でも、デッサン狂ってても合格。というか、塗りまで完璧にこなしている人の方がプロでも少ない。どうしても速度を優先すると注目されにくい塗り部分で手抜きになるので。最近はPCで色は処理できるので、やっぱりスケッチレベルでさらさらと生産できる人が理想的。癌種死のキャラデザの人とかがわかりやすいか。

次、締め切りの話。とにかく下手でも締め切りに間に合えばそれでいい。締め切りを破る人は仕事がどんどん減りますというか、マジで仕事来ない。というか怖くて仕事頼めない。だから絵が多少下手でも仕事がバンバン来ている人は締め切りまでにきっちり仕事する人が多い。あとひとくちに締め切りと言っても3回ぐらいある。挿絵でも表紙でもイラスト関係は大体以下のような感じ。

1.候補提出締め切り
大体要求される数×3程度。1枚描く仕事ならラフスケッチ3枚。3カットなら3カット×候補3つで9カット分。ただしこっちからもうこの構図で、とかこういうシチュエーションで、とかが細かく指定される場合もある。そういうときは候補の枚数は減るが、描き直しやリテイクが頻発する。

2.色つきの締め切り
カラーをのせた場合にどうなるかを見るための締め切り。この段階でポーズとか構図を修正する場合もある。ここで最終的に決定され、ゴーサインが出たら製作開始。

3.最終締め切り
完成された絵を提出してオシマイ。よっぽどひどい質でない限りリテイクはない。リテイクが出る場合よりも、追加でもう一枚とかの方が多い。なので早めに出す方がよい。あと締め切りに間に合わない場合は仕事を頼めなくなるので締め切り厳守。絶対に厳守。いつどのようなハプニングがあるかわからないのでやっぱり早めに仕事を上げてもらうのが吉。

次、お金の話。1カットで5000円から3万5000円が平均的相場。新人で安い場合は3000円で買いたたかれるので気をつけないといけないらしい。エビフライはそんな値段で買ったことはないので知らない。エロカットの場合はさらに安いから気をつけろ。安い場合は一次使用料のみなので版権は描いた側にある。なので、もう一度使ってもらう場合には二次使用料を受け取ることができます。高い場合は版権買い上げになる場合が多く、何度使い回しされても文句言えません。ただし、担当者がとってもやさしいエビフライのような女神の場合は、値段は安いけど印税扱いしてくれる場合もあり。書籍の挿絵で印税とかがはいると結構良かったりする。といっても月に数千円レベルだったりするが、ないよりまし。ただし印税と言っても第2版からというのが普通なので、初版で終わった場合は入ってこない。なお、無断使用された場合はペナルティ料金がもらえる。無断使用されるケースは締め切りまでに許諾が間に合わず、結果的に無断使用になる場合と、担当が無知で二次使用料を払うことを知らない場合などに発生。意図的に無断使用するケースはまずありえない。と思いたい。エビフライはきっちり処理していたのでもしかするといい加減な人だともっとぼろぼろかも。

とりあえずこれぐらいが基礎知識。専門学校でこういう事を一番最初に教えてくれる場合はいい学校、教えてくれない場合はダメな学校です。

以上はすべてフリーで活動する場合であって、実際にどこかのゲーム会社に就職したいとか、そういう場合は話が全然違ってきます。まず専門学校卒とかはやはり関係ない。ただし、高学歴であればあるほど有利に話が進む。特に中に入ってからの扱いが全然違うという話が多数。というのも、クリエイティブな仕事をしていない部署の人間は基本的に高学歴で占められているため。また、学歴と言うよりも基本的な学力がないとつらい場合が多い。文字通り「話にならない」ケースが出てくるため。社内でこういう事をして欲しいという説明を受けた場合にコミュニケーションできるだけのスキルと知識が必要。あとプレゼンテーション能力。誰も自分の味方になってくれない割にはずっと顔をつきあわせるので、自分のやっていることがどういう意図で行われているのかをきっちり説明できないと周囲が納得してくれない。また、意図書や企画書がどの立場でも必要になってくる。絵の場合は、その絵はどのような意図で描かれているのか、対象とする層はどのような層か、類似の他社の絵柄と比べてどのような点で差別化できているのか、などなど。特にCGムービー系は似たものばかりなので説明が絶対に必要になる。逆にこうやって社内でプレゼンに慣れていくことで独立の下地ができあがる。

最後に、こういう話でよく出てくる「努力」「才能」「センス」について。今回は「絵」でいってみよう。

努力でどのレベルまでできるかというのはよく聞かれる質問だが、正直言うと80%のレベルまでは努力。絵の場合の努力というのはデッサンや黄金比などの構図、基本的な色彩構成。つまり東京芸大とかの入試で求められているレベルが「努力」のレベル。だから、芸大の試験に通らないような人は努力が足りません、はっきり言って。そういう意味では専門卒というのは足かせになりこそすれ、足しにはなっていない。ただし美大や芸大でも「デザイン科」以外は専門学校と同レベルと見なされます。それぐらいレベルに差がある。詳細に言うと、その学校で最も難しいレベルの学科卒でないとキャリアにカウントされません。

才能に関してはこれはほとんどの絵描きが「ない」です。唯一絶対の才能は努力する才能。それはたとえば毎日絵を描いてみるとか、スケッチしているとか、そのレベル。それも単純に好きなものを描いているわけではなく、描く度に少しずつ修正していくという意味。先ほど書いた努力が80%というのは、まずそこまで努力して80%のレベルまで到達して、さらにそこから先にどれだけ伸びていくかというのが、「才能」。だから、大抵のいわゆる「うまい」絵描きは才能がないことを自覚しています。なぜなら、ある一定のレベルからもう先に進めなくなってしまうから。ただし、努力が足りないせいで壁にぶつかるということがあるため、未熟で前に進めないというのとは根本的に絶望の度合いが違う。ただし、才能と言っても「特性」があるため、違う方向で描くと伸び始める場合がある。

最後、頻繁に言われるセンス。デザインセンスとか言いますね。あれは努力し続けた結果、意識しなくても脊髄反射で判断できるようになった、という意味。色彩の場合がわかりやすい。色彩構成はただの理論なので、全部覚えれば誰でもできる。で、色のセンスというのはその組み合わせを瞬時に選び取る能力。好みで選ぶのはセンスではない、それはただの主観的判断。センスと主観は全くの別物。「コモンセンス」という言葉の意味するところを考えればわかる。つまり説明するまでもない常識レベルまで到達した努力の結果がセンス。つまり、才能はセンスではない。だからセンスがないという人は単純に努力していないだけ。

結論:さっさと仕事しろ、話はそれからだ

Topics: エッセイ |

トラックバック URL :

コメント